コートの仲間第17号 OBからの一言


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バレー部の応援に行って・・、いま思うこと
45期 上所 奈美
 昨年32年間住んでいた広島を離れ、兵庫県西宮市に引っ越しました。慣れない土地での生活は新しい出会いなど楽しいこともありますが、やはりどこか寂しさを感じます。そんな時、女子の西日本大会が尼崎市であるという連絡をもらい嬉しくなって早速応援に行きました。その日は雨で、体育館の中は6月の蒸し暑さとそれを上回る熱気が充満し、ここ1年子供とのんびり生活している私にとっては息をするのがやっとという状況でした。それでも久しぶりに味わう緊張感みたいなものを妙に心地良く感じました。連れて行った子供が落ち着かないため、ゆっくり観戦とはいきませんでしたが、我が広大チームは他の強豪チームにも負けない技術と体格を備え、更に雰囲気が良くまとまったチームだという印象を受けました。後でこの大会での成績が2位だったと知り、強い母校を誇りに感じました。そして久しぶりに広大バレー部に触れて、自分の学生時代を思い起こしました。
 私の学生時代…散々なものだったように思います。まず、体育会という縦社会がとても理不尽に感じられました。私は高校時代のチームのスローガン『心のバレー(自分に厳しく人には優しく、いつも笑顔でプレイしよう)』が大好きでした。人のミスを指摘し、責め合うなんて最低な人間のすることだと心の底から思っていました。また私は女子の推薦1号ということもあり、推薦で入ったからには少しでも競技成績を上げていかなければならないという勝手な使命感に燃えていました。更に私が一番伸びた高校時の練習方法が基本練習重視だったため、個人・総合力向上の最善の方法は基本練習を徹底的にすること、これが私のバレー観でした。ところが大学では全く違っていました。基本練習の時間は少なく、体力トレーニングと実戦練習が中心。ミスはどんどん指摘され、反省の時に交わされる厳しい言葉に落胆する日々でした。こんなことが積み重なり、それまで信じていたものが否定された気がするのと、自分の考えが正しいと思い込んでいたことから、練習する意味が分からず心のバランスを崩していました。そしてそれが反発となり大学4年間は先生を始め、チームの仲間に多大な迷惑をかけたと今更ながらに反省しています。先生や先輩の言葉に対して、心を開いて素直に聞く耳を持ち、肩の力を抜いてチャレンジすれば、もっと成長できたのではないかと思います。振り返ると、反省と後悔の言葉ばかりになりますが、今こうやって自分の思いを書くことができ、これまでは大学時代の自分を思い出すと胸が締め付けられ目を背けていたようなところもあるので、勝手ながら少しホッとした気がしています。
 しかし、この失敗は中学校の教員になってからは役に立ったと感じています。これまで2つの学校に勤務しましたが、どちらも一瞬たりとも気の抜けない問題行動の多い学校でした。思春期真っ只中で反発する生徒に出会った時、どれだけ道徳的なことを言っても心に響かないことがありましたが、私自身の失敗談やそれで得たことを話すと子供の心の中にすんなりと入ることができたように感じます。きっといろんな思いが交錯する中で苦しみ、自分の進むべき道が見当たらず、右往左往している子供たちと私の屈折した部分に共通するところがあったのだろうと思います。また、バレー観も変わってきました。私が受け持ったチームはすべて初心者で、いつもバレーボールがどれなのかを教えることからの出発でした。それなのに小学校のジュニアが盛んな地域に所属していたため試合では歯が立たないことが多く、一生懸命取り組む子供たちに力をつけてやりたいと試行錯誤していました。結果として、決められた時間の中で技術・経験不足を補い、総合力を高めていく為には、基本的な技術の向上と併せて、ある場面を想定した実戦練習を行い経験させることが必要であると思いました。自分やボールの動きを読めない・プレイをイメージできない子供たちに、少しでも早く納得させ体現させるためには、実際の場面を経験させることが効果的であると感じて、未熟ではありますが自分のなかでも、ある程度の指導方法が見えてきたようにも思います。今になって西村先生がよく実戦練習の大切さを話してくださったことを思い出します。
 今でも未熟な私は、自分と異なる人の考えを素直に聞き入れられないことがあります。そんな時、学生時代を思い出して、視野を広げて物事を見るように心掛けています。信念を貫くのも必要ですが、固執してしまうと成長できません。まずは前向きに聞いてみよう、やってみようと思うことにしています。その方が随分気持ちが良いし、心がすっきりしているのを感じます。最後に今、娘(可菜子)5歳、息子(賢人)1歳の子育てに奮闘していますが、子供たちにはのびのびと素直に育ってほしい、人に対して思いやりの持てる子になってほしいと思っています。そうした願いから、休日には自然に触れることのできる場所を探しては家族で出かけるようにしています。子供と落ち葉を拾ったり、どんぐりを拾ったりすることがとても楽しいと感じます。でも残念なことがあります。それは“お母さん、これ何の葉っぱ?”と聞かれても悲しいことにほとんど分からないのです。そして西村先生を思い出します。学生のときあれだけ自然と触れる機会があり教えてもらったのに・・・、もしかしたらこれが私の一番の失敗、そして後悔かもしれません・・・。

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