今回原稿依頼を受けて、正直自分で良いのかなと思いました。卒業以来、広島に足を運んだこともなく、毎年送られてくるこの部誌でバレー部の活躍を知るだけでしたから。でも、遠くで細々と頑張っているOBの声を聞いていただくのも良いことかなと考えて、少し経験や思いを書かせていただきます。
私は現在、母校である和歌山県立向陽高等学校で国語教師・男子バレー部顧問をしています。現在の部員は1年生3人で初心者ばかりです。2年前に部員が0になり、今年やっと復活しました。それ以前は県ベスト4を維持して近畿大会に5年連続出場し、平成19・20年度には決勝で開智高校と戦いました。19年度のエースが昨年までお世話になった前田朋哉です。今の和歌山県男子は私立の開智高校が19年連続優勝中で、他の公立高校との差はどんどん開いています。開智高校が全国大会で活躍することは対外的なアピールにはなりますが、県内の雰囲気からすると「諦めムード」というか、本気で開智を倒してやろうというチームがありません。ベスト4に入ることが目標になっている現況を見ると、県高体連バレーボール専門部副委員長という立場からも危機感を感じます。どうせ勝てないという気持ちでは選手は技術的にも精神的にも強くなるはずがなく、本気で強くなりたいと思う選手は開智に集まり、結果的には試合に出られないで終わる選手が増えます。競技力のレベルはトップの成績だけではなく、それを追いかけるチームのモチベーションに左右されると私は思います。だからこそ公立高校の指導者の意識改革が必要です。
前田がエースの時は8人のチ−ムで、打つのは前田だけでしたが、本気で開智に勝つつもりでした。春高の県決勝、前田が前後関係なく打ちまくり、それ以外はレシーブやサーブで頑張り、接戦でしたが結局負けました。でも選手達は満足せずに悔しがっていたので、次の県総体でもいい試合ができました。指導者はよく「良い選手がいたら…」と言いますが、私は「前田みたいなエースが欲しい」と言われる度に、「エースは育てるものだ」と答えました。前田は1年からエースでしたが、トスには絶対文句を言わせませんでした。うまい選手はそれ以外の者と技量の差がある場合、わがままになりがちで、自分のミスを他人のせいにします。だから前田には、このチームで勝つためには「弱い者いじめ」をしてはいけない、強い者が弱い者のカバーをどれだけできるかだと話し、彼もそれをよく理解し、その結果として決勝ではそれ以外の選手も開智相手に臆することがありませんでした。
広大の卒業生の多くは公立学校の指導者になっていると思います。私立と違って公立は選手を集めることは難しいけれども、時には良い選手が入ってくることはあります。でもそのチャンスを生かせるかどうかは、普段からこのメンバーで勝つにはどうしたら良いかと悩み、苦しみ、工夫する姿勢の有無にかかっています。前田も現在は郡部の中学校で男子バレー部顧問をしており、「頑張って選手を向陽に送ります」と言ってくれています。彼のチームは県でベスト4らしいですが、必ずチャンスは来ると信じて、日々の指導に全力で取り組んでほしいと思います。
最後になりますが、広大バレーボール部の益々のご活躍を祈っています。 |