先日、見知らぬ番号から着信がありました。「また災害でもあったのか」とおそるおそる受話器を取ると緊張気味の声で「コートの仲間の原稿をお願いしたい」との内容でした。その時は仕事も一段落つき、気持ちに余裕がありましたのであっさり承諾しましたが、今、物凄く後悔しております。
というのも、そもそも私は「コートの仲間」のような崇高な部誌に原稿を執筆するような人間では無いということ。大学生活では遊び呆けた結果、一年余分に在籍することになったような人間です。ですから「コートの仲間」をご覧の皆様には「こういう卒業生もいるのか」とさらっとお読みいただければ幸いです。
私は卒業後、地元である神戸に戻り消防士として勤務しています。消防士と聞くとほとんどの方は火事が起きた時に消火活動を行う消防隊や救急活動を行う救急隊をイメージすると思いますが、私はそれらとは違って消防法という法律違反を取り締まる違反是正という業務を行っています。最近発生した大きな火災事故として広島県福山市のホテル火災や京都府福知山市の花火大会での爆発事故等がありますが、これらの事故が発生した際に法律違反がなかったかを調査し、今後同様の火災が起こらないための予防策などを考え、神戸市民の生命、身体、財産を火災から保護することを目的として日々業務に励んでいます。
「なぜ消防士を志したかというと、人を助けるような仕事に就きたいと思ったからです」と面接官に訴えかけている方がたくさんいる中で、私はというと消防士になりたいと思ったことは一度もありません。特にやりたい仕事も見つからず、なんとなく決めた仕事がたまたま消防士で今に至っているような状態です。
本当は数学の先生になりたくて大学に入学しましたが、冒頭でもお伝えしたように、私は大学在学中本当に堕落した生活を送っていまして、教育者になる資格は無いと決めつけ諦めることにしました。特にそのように痛感したできごとがありました。
私の尊敬する先輩の一人に55期の高橋さんがいらっしゃいます。高橋さんをご存知の方は説明する必要がないと思いますが、少し不器用な方です。(高橋さんすみません。)けれども、そんなことをものともしない熱い心とやさしさで誰もが絶大な信頼を置いていました。
そんな高橋さんですが、現役時代は本当に苦労されていたように思います。どんなにつらいことがあってもくじけず、前向きに取り組む高橋さんを見て「なぜそこまで頑張れるのか」といつも不思議で、2人で自主練をしている時になんとなく高橋さんに質問したことがあります。高橋さんはバレーボールの指導者になることが夢で、「もし自分が諦めたり、くじけたりしていると将来自分が指導者になったときに子供達に指導する言葉の一つひとつが嘘になってしまう。だから、諦めたり、くじけたりすることはしたくない!」とはっきりと答えられていました。それを聞いた私は、「なるほど、こういう人が教育者になるべきなんやな!」とすごく納得したことを覚えています。
今考えると教育者を志していたなんて恥ずかしいばかりです。こんな私ですが、学生の皆様にお伝えしたいことがひとつだけあります。それは「今をとても大切にしてほしい」ということです。広島大学バレーボール部で毎日バレーボールをすることが当たり前のように感じ、時には嫌になることがあると思います。けれども社会人になってバレーボールをしようと思うと、まずコートを確保するという難しさに直面します。そして試合をするならば最低12人も集めなければならず、これがとても難解です。毎日のようにバレーボールができることがとても幸せなことであることをなかなか現役時代には気付けないもので、これを社会人になってから後悔することはとても勿体無いです。
また、社会人になると、広島大学バレーボール部で経験したことが自分の人生にどれだけプラスになっているかについても痛感することになります。実際に、どうしようもない私が職に就くことができ、不自由のない生活を送ることができているのは、広島大学バレーボール部に所属し、素晴らしい先輩、後輩、同期等に支えられていたからこそだと確信しています。
先輩、後輩、同期はもちろんのこと、バレーボールを通していろいろな人と出会い、いろいろな経験ができることに感謝し、今をとても大切にして欲しいと思います。
今後の広島大学バレーボール部の御活躍を期待しています。 |