コートの仲間第25号 OBからの一言


Click your color !
 
同窓会トップページに戻る OBからの一言(3)に戻る OBからの一言(5)に進む

近況報告など
44期 井上 貴士
 44期の井上です。今回原稿依頼を頂き、OBとしてなんの貢献もしていないため、少し恐縮しましたが、久々に学生時代を懐かしく思い出しながら、せっかくなので原稿を書かせて頂くことにしました。何を書こうか悩みましたが、私が卒業してから約20年間大阪で働いていますが、携わってきた仕事の内容や状況について報告させて頂きたいと思います。
 私は広大バレー部の中では少数派の工学部に在籍していました。学生時代はバレー部の活動(コート内外)にはまりこみ、学業をおろそかにしたため、なんとかギリギリ卒業したような状況で、工学部の中では単位取得などに苦労しながら過ごしていた記憶があります。しかし、広大バレー部の先生方、先輩方などたくさんの仲間に巡り会い、充実した学生時代を送ることができたと思っています。
 そんな感じで就職活動もごたごたしながら、なんとか社会人になったのですが、そこで偶然就職した会社でやることになった仕事が現在も続けている“建設コンサルタント”という仕事です。あまり一般の人には聞き慣れない仕事ではありますが、“建設コンサルタント”とは、国土交通省や自治体が発注した計画、調査、設計などの業務を行う仕事で、たとえば道路や橋などの設計をしたり、各自治体で作成しているハザードマップを作成したりと様々な分野の仕事をしています。今年は広島市でも非常に恐ろしい土砂災害が発生しましたが、こういった災害を防ぐための調査、計画、設計なども建設コンサルタントの仕事になっています。私はこの業界の中で下水道の技術士として働いていて、5年前くらいまでは下水処理場などの設計に携わっていましたが、最近はゲリラ豪雨など集中豪雨の浸水対策に関る仕事に多く従事している状況です。
 最近は非常に大きな集中豪雨が増加している状況で、いつどこで経験したことの無いような豪雨が発生するかは分からない状況になっています。今までは都市部を中心に10年に1回発生する大雨として1時簡に50ミリ程度の降雨に対応する整備が進められていましたが、それを越える大雨が頻繁に発生しています。また、浸水被害が発生する原因は大雨の他に、田畑の宅地化が原因であることも多くなっています。田畑が建物の屋根やコンクリートに変わることにより流出率が増加し、田畑に貯まっていた雨が直接流出することにより、被害が大きくなっているケースが多くなっています。
 浸水被害が発生した現地の土地利用の状況や変遷、地盤の高さ、雨水排水施設の状況、浸水被害発生時の降雨状況などを把握し、原因を究明し、適切な対策案を提案し、設計するような仕事が多くなっています。浸水対策としては、大雨のときに雨水をためるタンクを設置したり、ポンプを設置して低い地盤の地域から排水したりして、浸水するエリアを減らすことが多くなっています。また、田畑が減少することによる保水機能の低下を補うため、学校の校庭やグラウンドなどに大雨時だけ貯留するような流出抑制対策も多くなっています。ちなみに、一昨年度には東広島市役所から発注された浸水対策業務もやらせてもらいました。(久々に東広島キャンパスを訪れましたが、私がいたころは田畑が多かった地域も“都市化”したことに非常に驚きました。)
 話は変わりますが、この仕事の特徴として、皮肉なことに災害が発生するほど仕事が増えることがあります。また、政府の公共事業への投資次第で仕事が増減します。私が社会に出てからでも景気対策の補正予算による増加、民主党政権時代の縮小、東日本大震災による建設業界ミニバブル、自民党政権による業務増加と、私が就職してからも山あり谷ありです。しかし、抜本的には平成10年度以降はインフラ整備の完成に伴い公共事業への投資が減少し、現在ではピーク時の半分程度の業務量となっており、業界全体の低迷により、建設業全体が人手不足の状態です。団塊世代の方たちが歩んできた経済成長期は仕事も安定して多く、建設業に携わる人も多かったようですが、最近は人手不足と高齢化が深刻な状況が続いており、建設業は悪いイメージ(低迷、長時間労働など)が定着しているようで、若手が寄り付かない状況になっています。建設コンサルタントでも20代が極端に少なく、30代後半から上の世代が多い状況になっています。
 現在は政府が掲げている国土強靭化計画として、「耐震化」、高度成長期に建設した施設の「老朽化対策」、「浸水対策」、「土砂災害対策」、「津波対策」など様々な課題に向けて国をあげて進んでいる状況で、建設コンサルタントが求められるものも増えてきているので、こうした仕事に興味を持って、魅力を感じていただく若い人が増えてほしいと感じています。

 最後に一言。現在学生の方たちは社会に出てどんなことを経験するか想像もつかないこともあるとは思いますが、学生時代にできた仲間、全力で取り組んだ気持ちがあれば、どんなことがあっても、どんな分野の仕事をしたとしても、乗り越えられることが多いと思います。今を大切に頑張ってください!
 また、災害などが多く不安も多い時代ですが、自身が住まれている周りの状況を把握し、災害発生時には適切な行動をとることが大切と思います。想定外は必ず起こると思いますので、自助(自分で自分を守ること)の努力も大切です。最近は各自治体などから災害に関する情報が多く公表されていますので、参考までに以下に記します。みなさんが安全に暮らしていけることを祈っております。
 ○国土交通省ポータルサイト(ハザードマップなど閲覧できます)http://disapotal.gsi.go.jp/
 ○国土交通省XRAIN(詳細な雨量情報)http://www.river.go.jp/xbandradar/
 ○広島県災害情報http://www.bousai.pref.hiroshima.jp/hdis/
 ○私の会社(井上出ています!)http://www.tokencon.co.jp/

同窓会トップページに戻る OBからの一言(3)に戻る OBからの一言(5)に進む

Copyright (c) 2010 広島大学体育会バレーボール部 All right reserved.
赤 黄 緑 水 青 紫 灰 白 黒