コートの仲間第26号 OBからの一言


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7年間の講師時代を経て
53期 藤原 弘行
 私が広島大学理学部数学科を卒業してから11年目を迎え、現在は島根県の西部の進学校である浜田高校に勤務し、4年目となります。初の3年担任で慣れない推薦書や、進学指導に追われる中、女子バレー部顧問として休日のない生活を送っています。今回、この浜田高校の卒業生である山﨑君から依頼の電話をもらい、自分が7年間講師として島根県の教育に携わり、また、採用されてから4年目を迎え、これから採用試験に向かう後輩に、参考になることがあればと思い、自分の経験や考えをまとめてみようと思いました。
 私は大東高校で4年、吉賀高校で3年勤務し、採用試験8度目で合格しました。ありがたいことに、この講師時代から女子バレー部の顧問としてずっとバレーに携わることができました。近年の島根県の高校教諭の採用は、どの教科も20~30倍の倍率となり、非常に狭き門となっています。その中で、部活指導に手を抜くことなく、この狭き門を突破できたのは、間違いなくこの講師時代に出会った生徒への想いと、広島県で出会ったある先生の言葉のお陰です。私はバレーが大好きで、女子バレーの指導にはまり、部活を優先し、採用試験の勉強に身が入らない生活を何年も送っていました。その頃、同僚の先生方は、「部活は良いから自分の勉強をしなさい」と何度も忠告をしてくれました。正論ほど反対したくなるもので、「子供達の高校バレーは今しかなく、ほっとくことができない」と言って聞きませんでした。高校に講師として勤務すれば、誰しも何かの部活の顧問となります。現実、数学のような一般教科では、部活にはあまり出ずに、教科指導をしながら、しっかりと自分の勉強に専念している人が受かっていました。理想と現実に本当に悩みました。目の前の生徒を見捨ててまで自分のことに専念することは本当に教育なのかと…。そんなとき、広島県のある高校へ合宿に行ったとき、その高校の先生と2人で飲みながら話したことは今でも忘れません。その先生はこう言いました。「あなたのように受かってほしい人ほど受からない時代になってしまった。同じように部活に身を捧げて、採用されなかった人を自分はたくさん見てきた」と。そして、「これまで部活は良いから勉強しろってたくさん言われてきたんだろう?簡単なことだ。あなたは部活をして受かれば良いんだよ」と。「教員は生徒に部活も勉強も頑張れと偉そうに言う。だが、自分たちはしないって変だろ?あなたは勉強も部活もして、それで受かれば、本当の意味で生徒の手本になれる。」私はこの言葉に、視界がパッと開けました。それからは本当に勉強しました。部活も今まで以上に頑張りました。頑張れば頑張るほど、今の講師の立場では、生徒を勧誘したりできないし、来年度もその高校にいる保証もなく、地に足をつけてバレーの指導はできないことが分かります。吉賀高校という全校で100名にも満たない中国山地の小さな小さな学校で、それでも自分を信じてついてきてくれる生徒の為にも、絶対に受かるんだという強い気持ちで猛勉強しました。この吉賀での3年間が、今の自分の教育観を形成したと言っても過言ではありません。吉賀の生徒は、勉強やスポーツのできる子は、そのほとんどが益田市に出ます。吉賀高校に入学する生徒の多くは、自分は出れなかったと、自己肯定感の低い子が多かったように思います。
 現在、自治体の機能は中央に集まり、地方創生と言いながら、やっていることは地方の切り捨てです。島根県でも沿線部と山間部、東部と西部で明らかな格差があると思います。教育については、吉賀のような西部の山間部の中学校や小学校は教員の半分は講師で、正採用の教員は多大な公務を一手に引き受け、その教育の機能は著しく低いのが現状です。話は逸れましたが、私が採用試験に受かって転勤する時の部員は5人で、2年生は2人、1年生が3人でした。特に2年生は、先輩もなく、1年生のときにはたった2人で、ひと冬を越した子らで、2年生になり、何とか後輩が3人入り、2年生の助っ人を一人借りて大会に出られるようになったこともあり、さあ、3年になっていよいよ総体に向かうぞ、というときに自分がいなくなる。受かった為に、小さな学校では初人研が難しいということで、現在の浜田高校に転勤となりました。自分が試験に受かるように様々な気を遣ってくれて、受かった時は本当に喜んでくれた2人を裏切る形となり、この時ほど辛かったことはありません。ここでも、山間部の子供達はこんなに不利なんだと思いました。
 現在の浜田高校女子バレー部は、転勤前は島根県でも下から数えられるほど弱かったのですが、吉賀時代に西部の中学校、小学校の先生方と面識ができ、たくさんの生徒を送って下さいます。今では越境して寮に入ってまで、自分の元でバレーをする生徒もいます。昨年は快進撃を続け、8シードはもちろん、中国大会こそ逃しましたが、1位のチームを倒すなどの好成績も残してくれました。広島県の平木先生や大信先生、和田先生、谷先生(今年、香川県に帰られましたが)など広大の先輩や後輩のチームとは、たくさん練習試合をして鍛えていただきました。これからもよろしくお願いします。
 私が今の学生たちに伝えたいのは、どの県も抱える教育課題をしっかりと学び、その中で子供達の為に何が大切なのかを考えてほしいと思います。もちろん、現場に立たないと分からないことが多いと思いますが、自分がどういう生徒を育てたいのか、何を伝えたいのかは学生の頃からしっかりと考えて下さい。たくさんの生徒や先生方との出会いに感謝し、一人でも多くの広大バレー部の後輩が、バレーの監督となり、私のチームと対戦できる日を楽しみにしています。また、生徒を連れてリーグの観戦に行きます。

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